大空の唄


いきなり後ろから名前を呼ばれ、驚きのあまり肩が跳ねる


もしばれていたら、間違いなく面倒なことになる


俺はそんなことを考えながら、この状況に対する対処法を必死に考えた



「絢ちゃん!!」


は?


考える俺をよそに、まんまと振り向いた陽はそう言って足を止めた


陽の言葉に振り返るとそこには見覚えのある顔がある


「出待ちしちゃった」


そう言ってニヤリと口角を上げる絢音


「てめぇ、驚かすなよ」


そう言って睨み付けてもコイツは
悪びれるわけもなくただアホ面で首を傾げるだけ


俺は小さくため息を漏らしながら、“早く行くぞ”とだけ言って再び足を進めた




「何で分かったの?
いつもと違う変装なのに」


しばらく歩いて人通りもなくなったとき
不意に陽がそんなことを尋ねる


確かに、この変装は初めてだ
それに他の観客から俺らを見つけ出すのは簡単なことではないだろう


俺ら3人の視線を浴びた絢音は少し考えると楽しそうに笑った



「なんとなく!」



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