大空の唄
嗜好を巡らせながら携帯を開き適当に指を滑らせる
そんな俺の横に誰かが勢いよく座ってきた
それが誰かなんて目で確認しなくても分かる
『蒼空のバーカ!!』
コイツも一応気を使ってくれているのか
その言葉は決して大きな声ではないけど、くすぐったいほど耳元で聞こえた
「バカに言われたくない」
携帯の画面を見たままの俺にさらに立腹したのか
横目に見える絢音の頬は張り裂けんばかりに膨れた
「蒼空のバカ!アホ!人でなしー!!」
蒼空という名前だけで俺が空だなんて
誰も思わないだろうけど
突然大きな声を出されたことで体が反射的に反応してしまう
「うるせーバカ」
俺は慌てて絢音の口を手で押さえた