大空の唄
「着いたっ」
イヤホンを外し《カラオケ melody》というカラフルな文字を見上げる
今日からここで働くという実感が沸かないままこの日がやって来た
看板を見てより高まった不安と緊張
「もしかして…泉さん?」
まだ開店前の静かな店内に恐る恐る足を踏み入れると、すぐにどこからか名前を呼ばれた
慌てて辺りを見回すと店の奥から金髪でギャル系のお姉さんが現れた
「初めまして」
ギャルっぽいのにどこかナチュラルで清楚な雰囲気を漂わせるその笑顔
美人…そう、まさしくその言葉は
このお姉さんのような人のことを指すのだ
そんな事を考えながらついぼーっとしてしまう
そんなあたしの視界に不思議そうに首を傾げるお姉さんの姿が写る
「は…はい!泉です!」
ハッとしてぎこちない返事を返すとお姉さんはニコッと笑って私の肩を軽く叩いた
「緊張してる?
大丈夫!直ぐ慣れると思うわ」
フッと肩の力が抜ける
そしてお姉さんの柔らかい笑顔に癒された
あたしが男なら
もろタイプだな、なんて…
「はい!全力でがんばります!」
美人なお姉さんの登場に気を良くしたあたしは、笑顔でうなずいた