大空の唄



「あっ…」


「やっぱり、女か?」


目を輝かせ餌を目の前にした犬のように俺を見る翔の肩をぽんと叩き


「女だけど、お前が思うような関係じゃねえよ」


「じゃあどんな関係だよ?」


どんなって…


「バイトの奴だよ」


多分、あの時…


俺の脳裏に移る女は気持ち良さそうに寝息をたてていて


"バーカ、風邪引くっつの"


そう言ってジャンパーをアイツの背中にかけた自分の姿が浮かんだ


あいつには風邪引かれると困るんだよね…


俺が楽出来ないから…


「バイト先の女が彼女なの?」


身を乗り出し会話に割り込んできた陽も翔と同じく目をキラキラさせている


こいつら、めんどくせぇ


「あーだからそういうんじゃ…」


「本番入りまーす」


俺の言葉を遮るように響いた声に俺たちはハッとなって楽屋を飛び出した


遅れたらうるさいマネージャーに後からねちねち文句を言われる


そんなめんどくせぇ事はごめんだ


「空、収録終わったら詳しく話せよ」


ニヤリと口角を上げながら翔


「俺も聞く〜」


続くように満面の笑みで陽


だから、違うって何回も…
そう否定したい、でも本番5秒前を告げるADの声に言いたい気持ちを飲み込み適当に頷くしかなかった



後で面倒なことになりそうだな…


周りにバレないよう小さくため息を漏らした


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