大空の唄
『絢音ちゃん紅茶すき?』
ハッとして声のする方を見るとキッチンらしきところから顔を出しニコッと微笑む陽と目があった
『好きです!!』
そう言うと陽は『よかった』と八重歯を出して笑って頭を引っ込めた
そうだ、あたし……
急に思い出されるテレビ局での出来事…
それにしてもここ、どこだっけ?
整理整頓の行き届いた広くも狭くもない部屋
頭を抱えて考えるが蒼空に口を押さえられた辺りから今までの記憶がすっぽり抜けてしまっている
一体どうやってここまで来たのか、それさえ思い出せない
『空の部屋だよ』
どこからか聞こえた声にあたしの体は反射的にピクッと反応した
声のした方をみると翔が濡れた髪をタオルで拭きながら微笑んでいる
嘘っこれが蒼空の……?
『何んだよその顔』
驚き目を丸くするあたしはまた別の声がする方に振り返る
そこにいたのは蒼空…の声をした空……
声だけ聞くと蒼空が空だということを疑いたくなるけど、ソファーにズカッと腰かけるのは間違いなくテレビで見る空だった
『あーえっと…意外に綺麗だなあ、と思いまして…』