大空の唄


ジャーッ─…


調理場に水の音と
洗っている食器の当たる音が響く


「ねぇ…蒼空…」

「あぁ?」

「蒼空は好きな人とかいないの?」


何となく聞いてみたくなって
あたしはチラッと蒼空の方を見た


椅子に座りくつろぐ蒼空は


「いない、いたとしても
お前には関係ない」


相変わらずの不機嫌そうな声


そうやって冷たく返されるのにも
だいぶ慣れてきた気がする


「あたしはいるよ

同じ学校の1個上の先輩」


「あっそ…つか聞いてねぇし」


自分でも何で蒼空にこんなことを
言ってるのか分からないけど


「いいじゃん、聞いてよ」

「嫌だっていったら?」

「勝手に話す!」


誰かに聞いてほしかった


「あっそ、話せば?」


あたしの中の不安とか孤独を


「それがさ…」


蒼空になら話せる気がした


何の根拠も理由もないけど…


< 86 / 378 >

この作品をシェア

pagetop