大空の唄
ジャーッ─…
調理場に水の音と
洗っている食器の当たる音が響く
「ねぇ…蒼空…」
「あぁ?」
「蒼空は好きな人とかいないの?」
何となく聞いてみたくなって
あたしはチラッと蒼空の方を見た
椅子に座りくつろぐ蒼空は
「いない、いたとしても
お前には関係ない」
相変わらずの不機嫌そうな声
そうやって冷たく返されるのにも
だいぶ慣れてきた気がする
「あたしはいるよ
同じ学校の1個上の先輩」
「あっそ…つか聞いてねぇし」
自分でも何で蒼空にこんなことを
言ってるのか分からないけど
「いいじゃん、聞いてよ」
「嫌だっていったら?」
「勝手に話す!」
誰かに聞いてほしかった
「あっそ、話せば?」
あたしの中の不安とか孤独を
「それがさ…」
蒼空になら話せる気がした
何の根拠も理由もないけど…