カウントダウン・パニック
藤森は本城からでた言葉に衝撃を受けた。

それは今まで自分が音楽の世界に対して持っていたイメージとは打って変わって、あまりにもドロドロしていたからだ。

上を目指すにはそれなりの苦労は当たり前。

しかしその更にトップを極めるためにこれほど内部関係に不穏な空気を孕(はら)んでいたとは思いもよらなかったのだ。

もしかするとこれが沢山の人間があってこそ初めて成立するというオペラだからこそ起きる事態なのかもしれない。

それにしても他人を落とすために薬物を使用するということが藤森には理解出来なかった。


「それで、以前起きたという事件もやはりあなたと同じような状況だったと言うことですか?」

「はい。ただ…」

「ただ?」


本城は話す事を躊躇したようだったが、視線を一度机に落とすと再び藤森に戻した。


「ただ、以前薬物を盛られた方は自殺してしまったんです。」


本城は一息つくと更に続けた。
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