カウントダウン・パニック
俯きかげんに話す仁科は膝の上に置いた拳を力強く握り締める。
「許せなかったんですよ。あいつの夢を踏みにじった奴らが!そして事実を公表しなかったあの歌劇団が!!」
仁科の肩はふるふると揺れていた。
「だからこの劇場があんな奴らのために使われるぐらいならいっそ、奴らの墓場にしてやろうと思ったんですよ。私も含めてね。」
「それでこんなことを…」
風間がため息をつく。
「しかしお前がした事はけして許されない。復讐のために人を殺そうとしたり、ましてや関係のない観客をも巻き添えにしようとしたり。」
仁科から言葉が出る事はなかった。
すると藤森が仁科の肩に手を掛ける。
「幸い誰も怪我人が出なかったから良かったが、もし死人でも出そうものならあなた湯布院さんに顔向け出来ませんでしたよ?」
「えっ?」
仁科は顔を上げ藤森の方を見る。
すると目の前にあるものを差し出された。
「これは…」