カウントダウン・パニック

寺崎の声を筆頭に各々身支度を進める。


「あっ！」


突然赤羽が何か思い出したかのように声を上げた。


「赤羽さん、どうしたんです？」


上着を着ながら渡辺は赤羽の方を向く。

同じように身支度をしていた寺崎も赤羽の声に驚き赤羽の方を振り返る。


「あー、実は来週友達と行く予定だったオペラ、ドタキャンされていたの思い出して…。」


どうやら今日の事件で思い出したようだ。

するとなぜか寺崎と渡辺は嫌な予感がした。


「そーだ！寺崎か渡辺、どっちか一緒に行かない？」

「いっいや、俺は来週ちょっと予定が…」


寺崎は急いで断る。


「じゃあ渡辺一緒に行きましょ！」

「いいいいや！結構です！！」


今の二人にはとてもオペラを見るという気にはなれない。


「えー、いいじゃない。チケット勿体無いし。ちなみに今度のはプッチーニの《蝶々夫人》ね！」


赤羽は物凄く笑顔で渡辺に言う。


「いいです！もうオペラは十分ですよ！！」


そう言うと渡辺は一目散に部屋を飛び出した。