カウントダウン・パニック
その頃、風間は応接室で依頼された仕事を終えた藤森と一緒にいた。


「どうだ？」

「はい。警部に言われた通りの人物、何人かヒットしました！」


そう言うと抱えていたパソコンを机の上に置きメモ帳らしきものを取り出した。


「先ず、沢登春信（さわのぼりはるのぶ）。この人はこの劇場が建つ前にこの場所に住んでいた一人なのですが最後まで立ち退きに渋っていたそうです。最終的には五千万円を押し付けられ半ば強制的に立ち退きさせられたそうです。」

「ごっ五千万？」


思わず声がうらがえる。


「はい。それに際して関与していたのがどうも久宝グループの久宝憲二（くほうけんじ）らしいです。」


「久宝グループっていったら現在日本で三本指に入る大資産家なだけでなく、経済力まで持ち合わせているグループじゃないか！」


風間がそう言うと藤森は透かさず手帳のページを捲る。


「この久宝という男はどうやら無類の音楽好きだそうです。」

「あの会長がか！？」


意外な事実に少し驚く。

なぜなら風間が久宝を見る限りとても音楽好きという感じではないからだった。

実際久宝は見た目堅苦しく、趣味が居合いという話しだ。
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