カウントダウン・パニック

そこには新聞の切り抜きが表示されていた。


「森久保の代わりに仁科にする事を了承したんだろ？じゃあ何で久宝がリストアップされるんだ？」

「実はこれにはまだ続きがあって、久宝はせめて自分の理想の劇場にして欲しいと訴えかけたらしく、あまりに熱心に何度も頼みにくるから仕方なく国の方から仁科にそれを言ったらしいんです。」

「だが、仁科が作ったのは久宝の理想とは違ったものだった……という事か？」


藤森が言う前に風間が結論を出す。


「それでここを潰し、再び理想の劇場を作るとかいうのか？馬鹿げてる。」


風間は頭を掻く。


「警部、まだリストアップしただけですので久宝が犯人とは断定してませんよ？」

「分かってる。」


風間がまるで久宝を犯人と断定したように話すので藤森は念押しをする。


「しっかし、仁科も少しは久宝の望みのものを取り入れてやっても良かったんじゃないのか？」


風間は再び黒のペンを手に取りながら意見する。

そのままホワイトボードの沢登春信の隣に久宝憲二と書いた。


「まぁ、建築物も一種の芸術品なのでしっかりした依頼でない限り、自分の創造品を造りたかったんではないでしょうかね。」