カウントダウン・パニック



「…えーと、『新東都シティオペラ劇場は建築家仁科経政(にしなつねゆき)氏の設計の下、今年十月に完成。』…あっ!そういえばニュースで言ってたな。」


車に乗り込んだあと渡辺はパソコンで現場の情報を集めている。

ホームページには劇場の画像と関係者の画像が載っていて、その下に説明書きが続く。


「確かそこって今オープニング公演の真っ最中じゃなかったかしら?」


赤羽は運転席から渡辺に話しかける。


「えーと…あっはい。そうです!」


パソコンの画面をどんどん下へとスクロールしていき内容を確認していく。


「どうやら今日はそのオープニングの最終日らしいです。『ヴァーグナー作曲:歌劇《タンホイザー》十六時三十分開場十七時開演』…ヴァーグナー?」


パソコンに走らせる指を止め聞き慣れない言葉を呟く。


「渡辺ヴァーグナー知らないの?」


赤羽は助手席に座る渡辺を一瞬チラリと見る。


「あっはい…。」


渡辺は少しばつが悪そうに頭をかいた。


「ヴァーグナーは十七世紀のドイツの作曲家よ。今日公演される《タンホイザー》なんて結構有名だと思うんだけど…。」


赤羽は再び渡辺をチラリと見た。
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