そのときは。
「もしもし…」
震える手によって、小刻みに動くケータイ。
『あ、よかった出てくれた。ごめんな、突然電話して』
悠とは違う、少し低くて枯れた声に、左耳がくすぐったくなる。
「ううん、ちょっとびっくりはしたけど。まさか電話かかってくるなんて思わなかったから」
『ははっそっか。つーかさ、ごめんな。』
「ええ、何が?」
『さっきのメール。元カノの話とか、マジいじりにくいっしょ?言うべき話題じゃなかったなってちょっと後悔した』
ああ、そんなことか。
「ううん、そんなことないよ。でも境遇が似すぎてて、なんかちょっと切なくなっちゃった」
『あー…、そういえば。飲み会の時、そんなこと言ってたね』