そのときは。

『亜紀ちゃん、』


返ってくる声は、別人。


少年みたいないつものあどけない声で、「亜紀」って呼んでほしいのに。


それは叶わないんだということを改めて思い知らされて、余計に寂しさが増した。





耳の裏に残ってる、悠が恋しい。


だけど、それはもう他の子のもの。


あたしの知らない、遠い誰かのもの。





目頭がツンと熱くなって、何かが突然押し寄せてきた。

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