そのときは。
10 p.m.
電話の向こうの声も聞かずに延々と泣き続け、とうとう時間は10時半を回った。
あたしはもうすっかり泣き疲れて、茫然としたままベッドに横になってる。
黙りこくる、ケータイ。
しばらく続いた沈黙を、穏やかに彼が破いた。
『…亜紀ちゃん?』
その声は、もう悠ではなかった。
「ユウ…ごめんね」
『なんで亜紀ちゃんが謝るのさ』
「だってなんか、ワケわかんないこと泣き喚いて…」
『ううん。それより、落ち着いた?』
「うん…ありがと」
泣きすぎたせいでカラカラになった目を閉じて、一つ二つ、深呼吸した。