sweet lovers A
「お前が好きな先輩……何てったっけ?」

「周藤先輩!」

「そう、ソイツ。さっき、向こうで見たけど」

「向こうってどこ!?」

 あっちだ、って食品売り場の方をヒロトが指さす。

「えー……どこだろう、千佳、分かる?」

「探しに行けばいいじゃん」

「む、無理っ! 恥ずかしいよ」

「お前馬鹿じゃねーの?」

 突然降り注いだヒロトの声に、あたしは「バカって何よ!」って反射的に叫んでいた。

「向こうがお前のこと知ってるわけねーのに恥ずかしいも何もねーだろ」

 うー……確かにそうだけど!
 でも、そうじゃない!

 学校でだって中々見掛けない人と、ウチの近所のスーパーで出会うなんて、奇跡に近いんだよ?

 もしかしたら、何度かここですれ違ってるかもしれないし。
 もしかしたら、今日ここであたしと会って、あたしのこと覚えてくれるかもしれない。

 でもそんなことになったら、学校で、

『この前スーパーに居た子だよね』

 だなんて!
 あの顔とあの声に言われたくない!!
 あたしの理想が崩れる!

 でも!

 学校でだって中々見掛けないんだから、今日のことはチャンスなのかもしれない!

 あー!!
 どうしたらいいのっ!?
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