sweet lovers A
 気がついたら、自分の部屋に居た。

 あたし、バカみたい。
 一人で勝手に舞い上がって、一人で勝手に落ち込んで。

 先輩のこと何も知らないのは、あたしの方なのに。

 勝手に勘違いしているだけなのに。

 二人が、余りに仲が良くて。
 二人が、お似合いに見えてしまったから。

「……チョコ、買い忘れちゃった」

 ポツリと呟いたあたしの声を拾うように、携帯が鳴った。
 千佳からの電話だ。

「……もしもし?」

 そっと声を送り込むと千佳が『心配したんだからね!』って大きな声で言ってきた。
 耳がキーンてする。

「ご、ごめん」

 あたしは素直に謝った。

 折角チョコを買いに行ったのに。
 千佳もヒロトも、あたしの為に先輩のこと教えてくれたのに。
 二人の気持ちを踏みにじってあたしは逃げたから。
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