sweet lovers A
「周藤先輩、すっげー数のチョコ貰ってんだってな」

 あたしの手にあるチョコを見て言ったのかそうじゃないのかは分からないけど。
 ヒロトの何気ない一言も、なんだか今は辛い。

「俺の分は?」

「あるわけ無いでしょ」

 あたしは静かに一言。
 それだけをヒロトに突きつけて席に着いた。

 なんか、もう嫌だよ。

 分かっていたことだけど。

 先輩に彼女がいるとか、萩原先輩とデキてるとか、そんなことはもうどうでも良くて。
 あたしは、先輩と向き合って、チョコを渡すことばかりを想像してた。

 恥ずかしくて、何も言えないかもしれない。
 それでも、応援しています、って一言添えられればそれでいいと思ってた。

 でも、現実はそうじゃない。

 先輩を囲む女の子。
 笑顔でチョコを貰う先輩。

 あの輪の中に入る勇気なんて、無いよ。

 あたしみたいに遠巻きに見ているだけの女の子も沢山いたんだから。
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