sweet lovers A
 先輩がそう言うのと同時に、どこからか「成都!」って先輩の名前を叫ぶ声が聞こえた。
 びっくりしたあたしは、きょろきょろと辺りを見回す。
 周藤先輩も、周囲を見回している。

 誰か、見ていたのかな。
 は、恥ずかしい!

「成都!」

 もう一度、先輩を呼ぶ声が聞こえて、中庭に男子生徒が入ってきた。

 ――萩原、先輩……!?

 もの凄い勢いで走ってきた萩原先輩は、周藤先輩の腕を掴んで、

「――そんなもん受け取んな!」

 って、……え?

 なんで?

「ご、ごめんね! みはねチャン!!」

 もう少しで、あたしのブラウニーは先輩の手に渡るところだったのに。

 周藤先輩は、萩原先輩に引っ張られるまま校舎に入っていってしまった。
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