sweet lovers A
「海羽?」

 不意に名前を呼ばれて振り向くと、ヒロトが立ってる。

 どうして、こんな時に現れるかなぁ……最悪。

「何してんだ?」

「……ヒロトには、関係ないよ」

 泣いてるの見られたくなくて、ヒロトに背を向ける。
 足音で、ヒロトがあたしに近付いてきているのが分かった。

 あたしの真後ろで、何か物音がする。

「これ」

 ヒロトの手が、あたしが捨てたブラウニーを持っていた。

「何よ」

 余計なことしないでよ!

 それは捨てたの!

 あたしの気持ちと一緒に捨てたんだから、拾い上げないでよ!!

「お前が捨てたのか……って、海羽、泣いてんのか!?」

「泣いてないよ」

「だったらこっち向いて顔見せろよ」

「嫌!」

 あたしは嫌だって言ってるのに、ヒロトに腕を引っ張られて、ヒロトと向き合う形になってしまった。
 
 こんな情けない姿、千佳にだって見られたくないのに。
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