sweet lovers A
「これ、先輩に渡すヤツだろ?」

「もう、いいの」

「諦めるのかよ」

「大きなお世話! 放っといてよ!」


「放っとけるわけねぇだろ!!」


 ヒロトが余りに大きな声を出すから、あたしはびっくりしてヒロトを見遣った。

「お前の泣いてる顔は見たくない」

「……ヒロトのくせに、かっこつけないでよ」

 思わずそんな言葉が口をついて出たけど。

 その瞬間。

 ヒロトがちょっとだけ格好良く見えてしまった。

「ほら、何突っ立ってんだよ。帰るぞ」

 あたしに背を向けて歩き出したヒロトが、立ち止まって振り返る。
 その手にまだブラウニーがあることに気付いて、あたしはヒロトを引き留めた。

「ちょっと、なんでソレ持って行くの!?」

「お前が要らねぇんなら、俺が貰う」


「どうしてよ。捨てたんだから拾わないで!!」


 ヒロトが一瞬でも格好良く見えたなんて、あたしどうかしてるよ!

 最低だ!

 あたしも、ヒロトも!
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