sweet lovers B【BL】
 以前、こうやって成都を呼んだ時に作ったオムライスが気に入ったらしい。
 成都が学校でもその話をするから、弓香や他のヤツらにまでせがまれる。
 美味しいと言って貰えるのは嬉しいが、ソレ目当てで来ると思うとなんだか切ない。
 俺が食事の後片付けをしている間、成都は勝手知ったるとばかりに部屋でくつろいでいる。

 お袋と二人暮らしの家。
 そのお袋は、今日は居ない。

 成都とこうやって二人きりになるのは良くあることだけど。
 改めて意識すると、なんだか落ち着かない。
 ちら、と成都を見遣ると、つまらなそうにテレビのチャンネルを変えまくっていた。

 俺が成都の相手をしないから退屈な……ワケないな。
 純粋にテレビがつまらないんだろう。

 変な方向に走り出す思考をごまかそうと、俺はわざと音を立てながら食器を洗った。
 成都用に買ったデザートのチョコケーキを持ってリビングに戻ると、それまで寝っ転がっていた成都がいそいそと起き上がってきた。

「紅茶でいいよな」

「ありがとう」

 ふとした瞬間の、成都の表情や仕草、声。

 何気ないそれらを、愛おしく感じてしまう。

 手を伸ばせば触れられる。
 声を掛ければ、間近で視線が絡む。

 こんなにも近くにいるのに。
 俺と成都の距離は、遠い。

 無駄に早まる鼓動が恨めしい。
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