sweet lovers B【BL】
「萩原くん、チョコレート貰ってくれる?」

「……俺?」

「受け取ってくれるだけでいいから!」

 ずい、と差し出された袋を思わず受け取ると、逃げるようにその子達は教室から出て行った。

「さすが、陸上部エース。モテるね」

「からかうな」

 横から茶々を入れてくる弓香を思わず睨むと、「怖い顔してるとなっちゃんに嫌われるよ」なんて言いやがった。

 結局その日の朝は、女子達のせいで成都に話し掛けることすら出来なかった。
 今日はずっと、こんな調子なのだろう。
 見てるだけ、ってのは、結構辛い。

 でも、それ以上に――。

 俺の鞄の中には、弓香や他の女子達に貰ったチョコレートが入っている。
 弓香みたいに義理でくれるモノはともかくとして、特別な気持ちが込められたものは、正直なところ重い。

 弓香が言っていたのはこの事か。

 成都も、こんな思いを抱えているんだろうか。
 でもその中に、成都の心を掴むものが紛れているかもしれない。

 紛れていたら……。
 俺は、笑って成都を祝福してやることが出来るだろうか。
 いや、しなきゃならないんだ。

『よかったな』

 って、言ってやらなきゃ。
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