sweet lovers B【BL】
「――ここで開けちゃダメ」

 天の助けにも等しい声が、俺の手を止めた。
 弓香だった。

「弓香! なんで今回手作りチョコじゃないんだよ」

 楽しみにしてたのに、と、成都が開口一番に文句を言う。

「てゆか、なんで開けちゃダメなんだよ」

 更に文句を付け足した成都に、弓香はいつになくきつい眼差しを送った。

「それは、あたしが清治にあげたチョコなの。なっちゃんは他の子から沢山貰ってるでしょ」

「清治だって貰ってるよ。開けちゃダメなのと何の関係があるワケ?」


「そんなの――なっちゃんの態度が曖昧だからよ! なっちゃん見てると苛々するの!」


 突然声を上げた弓香に、俺も成都もびっくりして言葉が出なかった。
 しん、と静まりかえる教室内に、廊下に走っていく弓香の足音だけが響く。
 それと同時に予鈴が鳴って、俺の席から成都が勢いよく立ち上がった。

「成都?」

 俺の方を振り向きもせず、成都は自分の席に戻っていった。
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