sweet lovers B【BL】
「成都……」

 思わずその名を口にして、空いている左手を成都に伸ばし掛けたとき、弓香がこっちへ歩いてきた。
 行き場を失った手を静かに下ろすと、俺の右手を解いた成都が弓香と向き合う。

「何してるの、なっちゃん」

 あからさまに不機嫌な声。
 成都とそう変わらない身長の弓香は、成都の手から箱を奪い返して、俺の机に置いた。

「清治はあたしのチョコを受け取ってくれたの。あたしはなっちゃんじゃないからこんな事しか出来ないの! これくらいいいじゃない! 邪魔しないでよ!!」

 堰を切った様に弓香が成都に言葉をぶつけるのを、俺はただ見ていることしか出来なくて。
 二人の会話が全く見えていなかった俺は、二人が抱えている気持ちになんて、これっぽっちも気付いていなかった。

「……ごめん」

 それだけ言った成都は、教室から飛び出していってしまった。
< 37 / 46 >

この作品をシェア

pagetop