ー雪女郎ー 雪洞と凪
凪は、瞳を見開いた。








「男に騙され、自殺を図ったんです。・・・誇りを守るために。わっちに、大事な禿を残して。」










「そ、う。」








「織閖はこの吉原を出て行きました。・・・織閖もまた。わっちに、愛らしい禿を残して。」










雪洞は、空を仰いだ。








「わっちは、一人で此処にいます。・・・何も、ありんせん。」











「ただただ・・・静かに時を過ごしている。」









「そして・・・・・・ここで、わっちは朽ちるんです。」










「母さんと同じように。」









雪洞の頬に、涙が光った。
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