ー雪女郎ー 雪洞と凪
「つまらぬ、事を言いましたね。忘れておくんなし。」









雪洞は、深く頭を下げると、大門から離れようとした。








凪は、ふと微笑んだ。








「待ちなさい、雪洞。」








ゆっくりとした穏やかな声で言った。







雪洞の瞳から、涙があふれた。








久しぶりに聞いた。







愛しい人の声。








「アンタは一人じゃない。」







凪は、そっと雪洞に近づいた。









しかし、その足が大門を超えることはなかった。
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