ー雪女郎ー 雪洞と凪
これから・・・
「あ、雪洞姐さん。昨日、ずいぶんとお帰りが遅かったんですけど・・・」









桃が、雪洞の座敷を訪れて言った。








雪洞は、窓辺に寄りかかり、広く澄んだ空を見上げている。








「大変だったんですよー。心配性の風が、わっちの隣でずっと騒いでいて。」









「昨日は・・・母さんと話していたんだ。」








雪洞が、静かに言った。








「え・・・?でも、雪洞姐さんの。」








「もちろんいない。でも・・・独りぼっちだったわっちを、誰よりも愛してくれた人がいた。」










「誰よりも、わっちを想ってくれる人がいた。」









「本当の母さんじゃないし、母さんだと思ったこともありんせん。」










雪洞は、桃を見つめた笑った。








「呼んでみたくなったんだ。」
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