本気なんです。
地下の駐車場に止めてある、柊サンの車の前にきて、普通に後部座席のドアを開けて乗り込もうとたら、
「椎名?なんで後ろなんだ?助手席に乗ればいいだろ?」
なんて、不思議そうな柊サンの声が聞こえてきた。
「あ...いや...。助手席はさすがに彼女サンに悪いかな?と思いまして・・。」
そう、やっぱり女の子なら自分の彼氏の車の助手席に、他の女の子が座るなんてイイ気分はしないと思う。
そう思って遠慮して、後部座席に乗ろうとしてたんだけど。
「プッ...。おまえ、変なところで気ぃ使うんだなー。大丈夫だよ。そんなコト気にしなくていいって。」
柊サンは笑いながらそう言って、助手席のドアを開けてくれた。
それって・・
彼女は居ないから気にしなくてもいいって事?
それとも・・
彼女はそんな事イチイチ気にしないから、私も気にすんなって事?
柊サンのどっちともとれる言葉に、ちょっと悩んだけど....せっかく助手席のドアも開けてくれてるし、私はお礼を言いながら車に乗り込んだ。
会社から家までは車で20分ぐらいで、私は道案内をしながら時々、運転する柊サンの横顔を盗み見た。
その姿は、仕事をしてる時やふざけて笑っている顔とは、また違う表情で。
そんな表情が見れて嬉しいのに、何故だか無償に切なくて。
なんだか分からない自分のモヤモヤに、唇を噛みしめてジッと耐えた。
家までついたら、”早く寝ろよ。”と言って柊サンはスグに帰って行った。
走り去る柊サン車の車をぼんやりと見届けてから、私は玄関のドアを開けた。