風花
Cloudy sky


「ねーねー、アイス食べて帰ろうよ」
「いいねー!あ、野川さんも一緒に行かない?」
「…行かない」

何あれ、感じ悪い。
そんな声を背中に受けながら、さっさと教室を後にする。
廊下や教室、校内のいたるところに飾られた、マリア像やキリスト像。
清廉潔白を絵に描いたようなこの学園の空気に、私はいまだ馴染むことが出来ずにいた。

(…こんな学校、来たくなかったのに)

入学式から、わずか2週間。
その間、何度、「辞めたい」と思っただろう。
本命の高校に落ちたりしなきゃ、誰がこんな学校…
そう、私だけ、本命に落ちたりしなければ・・・…


『えー、サチってば1人だけ落ちたのぉ?』
『負け組ってヤツ?』


中学3年間、何をするにも一緒だった仲良しグループ。
4人のうち、私だけが本命の公立高校に落ちてしまった。
一生懸命勉強したのに、私だけが、皆に追いつけなかった。
そんな私を励ますどころか、見下した、3人。
あの時ね、悟ったんだよ。
所詮、友人なんてその程度だって。
他人なんて信じない、裏切られるくらいなら、初めから信じなきゃいい。
何をするにも、やる気が出ない。
何に対しても、心動かされない。
生きてるという実感も、感じられない。
これで恋人でもいれば、少しは違ったのかも知れないのに。


─私は、何のために生きてるんだろう。


帰り道、見上げた空は、曇り空。
まるで私の心みたいに、澱んで、くすんだ色をしていた。
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