[短編]ゆっくりと
「相変わらず、この部屋だけ別世界だな」

冬花らしい部屋だとは思うが家全体を見れば浮いている。

そう冬花に言えば怒りながら「違うよ!ここは別世界なの!」と言った。

だから、秋人も別世界と言うようになった。

部屋と外の違いを見比べながらぼーっと立っていると後ろからカチャカチャと食器の当たる音が聞こえた。

「あれ、何立ってるの?」

首を傾げながら部屋に入り、コップを二つ小さなテーブルの上に並べる。

「ん、何でもない」

また、口に出して言えば怒ってしまうかもしれない。

そう思って秋人は、はぐらかした。

コーヒーの入ったコップの前に座り、それを手に取り口の中に流す。

秋人は一口飲んだコーヒーはとても甘かった。

コーヒーには最低、二杯砂糖を入れることを知っている冬花は何も言わなくてもわかっくれている。

それが嬉しくて自然と頬が緩む。

ふっと、ニコニコとベッドに凭れながら笑っている冬花が目に入った。

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