[短編]ゆっくりと
基本、女は面倒な生き物と思っている秋人は女性と友達どころか話すらしない。

そんなことを知らない冬花なら今日会った女性を友達だと思っても仕方がないのだろうが。

「その女が何か言ったのか?」

冬花はこくりと頷いた。

「どうしてか、秋人の彼女が私だってその人達知ってて。その人達に何も知らないくせに秋人と付き合ってるなんておかしいって…」

話し終えると冬花はまた黙り込んだ。

秋人はひとつため息を落とした。

そして、ゆっくりと優しく冬花を抱き締めた。

驚いた冬花は顔上げようとしたが秋人の手で遮られた。

「俺達は知り合って何ヶ月だよ」

いつもより低い声に怒っているのだと冬花は思った。

「…二ヶ月」

「付き合い始めて一ヶ月半になるんだな」

頭を撫でながら出来るだけ優しく話した。

一目惚れをしたと初めて会った時に冬花に言われた。

最初は、正直鬱陶しかった。

だが、いつの間にか冬花の何気ない優しさと何でも問題を背負い込んでしまう性格に目が離せなくなった。

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