[短編]ゆっくりと
それから数日後に秋人は自分の想いを伝え二人は付き合い始めた。

「俺も冬花の事まだあんまり知らないぜ?二ヶ月って意外に長いようで短い。これからお互いに知っていくもんなんじゃねーの?」

両手で冬花の頬を包み顔を上げさすと秋人はそう言った。

「それに、俺がコーヒーに砂糖二杯以上入れるって知ってんの冬花だけだぞ」

「さすがに家族は知ってるけどな」と苦笑いを浮かべた。

すると、冬花は嬉しそうに目を輝かせた。

「そうなの?深兄も知らない?」

深とは冬花の兄で秋人が気を許す数少ない友達だ。

そして秋人の妹、海里の彼氏でもある。

「あぁ、他人の前ではコーヒー飲まないようにしてるから」

秋人は抱き締めたまま、冬花の頬に唇を寄せ楽しそうに話す。

くすぐったそうに冬花は体をよじるが抱き締められているせいで逃げられない。

「じ、じゃあ、怒ってない?」

「怒るよりも呆れたわ。ちなみに、俺女友達いないから」

「え!?」

意外に大きな声で驚いたので、秋人も同じように声は出さなかったものの目を見開いて驚いた。
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