[短編]ゆっくりと
「何だよ、その驚きようは」

「だって、海里が秋人は女友達が結構いるって…」

「騙された」とうなだれている冬花を見て秋人は苦笑いを浮かべるしかなかった。

(あいつ、余程冬花を気に入ってんだな)

海里は気に入った相手だとどうしてもいじめてしまうことがある。

「まぁ、気にすんな」

頭をポンポンと撫でると冬花は顔を上げ笑った。

「そうする」

安心したような笑顔を見て秋人も内心安堵した。

「あ、あのね」

「ん、なんだ?」

「いつまで、抱き締めたままなの?」

冬花はずっと自分を抱き締めたまましかも髪を弄んでいる秋人に恥ずかしくなった。

「外ではあんな大胆に抱きついて来ただろうが」

「あれは、勢いで…」

もじもじと動く冬花が可愛らしくてぎゅっとさらに抱き締めた。

「まぁ、冬は暖かいのが恋しくなる季節だし、誰も見てないからこのままでいいんじゃね?」

額に口付けをすると冬花は顔を朱色に染めた。
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