初恋リミット
茗子は「8歳?」と呟いて何かを考えるように宙を見た。そしてすぐにあの事を思い出したらしくハッとした。

「あ……怜士のお母さん?」

私は無言で頷いた。

「だから、ずっと一緒にいる、か」

茗子は納得したような顔をしていた。


12年前、8歳のとき怜士のお母さんは亡くなった。自殺だった。それだけでも相当ショックを受けていた怜士を更なる衝撃が襲う。まだ喪が明けぬうちに怜士の父親は再婚したのだ。しかも新しい母親のお腹の中には将来の弟か妹がいて……。


あの頃、幼く無力な私にできたのはただ怜士の側にいて、ずっと一緒にいると約束することだけだった。
私だけは変わらず怜士の側で、味方で居続けようって思ってた。それは揺るぎない未来だと信じていた。

親の転勤で引っ越すことが決まるまでは……。



「私からした約束なのに、自分で破っちゃった」

私は自嘲するように笑った。

「仕方ないよ、子供だったんだから」

茗子が宥めるように頭を撫でてくれた。
『子供だから』『仕方ない』それは自分を正当化するために言い聞かせていた言葉だ。
ほんの少しだけ心が軽くなった気がした。

「ありがと、茗子。大好きだよ」

「私もユズが大好きよ」

「やったね、両想い!」

私はそのまま話を逸らして暗い話を終わらせた。それからはお互いの近況について話し合った。

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