初恋リミット
「柚月……?」

メイコの家に向かって歩いていると、名前を呼ばれたような気がした。
思わず立ち止まって周囲を見渡すと、車道の左側にあの車が止まっていた。運転席の窓が開いていて、さっきの男性がこっちを見ていた。思った通りのイケメン。
その男性は"彼"だった。

「倉本柚月だろ?」

「そう、だけど……」

こんな所で会うはずじゃなかったのに。会うつもりなんて、なかったのに……。

「やっぱり。俺のこと覚えてる?」

忘れるはずない。私はずっと……。

「……レイジ、河野怜士、でしょ?」

「正解!」

そう言って怜士は笑った。笑うとあの頃の面影がある。

「メイコんち行くんだろ?乗ってけよ」

「い、いいよ。歩いてくから」

「遠慮なんてらしくない。途中なんだから乗れよ、な?」

どことなく嬉しそうな顔。
その顔、反則……。

私は誘惑に負けて"彼"に近付いてしまった。

< 6 / 15 >

この作品をシェア

pagetop