初恋リミット
「久しぶりだな」

「うん。7年振りに帰ってきたから」

「そっか、7年かー」

運転中の怜士の横顔をチラッと盗み見る。その横顔にもうあの頃のような幼さはない。すっかりオトナの顔になってる。

「変わったね」

「え?」

あっ!!
心の中で言ったはずなのに口に出ちゃった。

慌てて口を手で塞いだ私を見て怜士はフッと鼻で笑った。

「ユズは変わってないな。学校の前に立ってるの見てすぐわかった」

「どうせ私は変わってませんよ。童顔だし」

不思議。昔みたいに話が出来てる。

今まで、怜士と会って会話する場面を何度もイメージした。その中で、私はいつも怜士に責められていた。それが怜士に会うことを恐れていた理由。イメージ通りの言葉を浴びせられるのが怖かった。
でも現実はまるで違う。予想通りの言葉なんてひとつもない。
怜士にとって私との思い出は過去になっちゃったってことなのかな……。

「なんかさ、ユズといると癒される」

「はぁ?」

突然のことに素っ頓狂な声を出してしまった。

「嫌なこと忘れられる感じがする」

「怜士彼女いるでしょ?彼女に癒してもらいなさいよ。超美人な彼女に!」

「あぁ、あの時見てたんだっけ。超美人な彼女がいて羨ましいだろう」

こっちを見てニヤリと笑う。

「別に!!」

フンッと顔を逸らして窓の外を見た。そこはすでに目的地の周辺だった。

「はい、到着」

怜士の運転する車は懐かしい家の前で止まった。

「……俺はお前さえいてくれればそれで良かったのに」

降りようとしてドアに手をかけたとき怜士の切なそうな声が聞こえた。

それって、どういう意味?

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