Romance Cutter ―初恋の傷請け負い人― 第五話
ケイが目覚めた頃には、もう外は真っ暗であった。ケイは部屋から出て行き、そのまま雨でぬかるんだ庭におりた。既に雨は止み、か細い三日月が空に顔を出していた。
「…随分と、冷んやりしている。冷たい雨が降ったんだな。
それにしても、あの『ロマンス・カッター』は、どこにしまってしまったのか。恐らくあれが、僕の失われた記憶をよみがえらせる鍵となりうるはずなのに…」
ケイは思いつくまま、手当たり次第にロマンス・カッターの行方を追ったが、依然見つかることなく、虚しく時が過ぎていった。
…それから毎日、一心不乱にそれを探し続けるケイ。
「一体、何を探しているんだ、ケイ。」
「お手伝いしましょうか?」
余りにも根を詰めて探すものだから、賢やお手伝いのすみ江が心配して一緒に探し出そうとするが、ケイはその度、その援助を断った。
「一人でやるから。」
ケイは、家中くまなく探した。しかしその甲斐なく、それがケイの目の前に現れる事はなかった。
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