キミが好き
なのに、あたしはいつから山田をみんなのものだって思うようになったんだろう。
物分かりのいい彼女になりきって、そんな自分に溺れていただけなんだ。
悲劇のヒロインを演じていただけなんだ。
恋はそこまで綺麗なものじゃない。
想いが強いからこそ、ボロボロになって
ぐちゃぐちゃになって
それでも、人を想う気持ちは何よりも綺麗なんだ。
「あたし…」
「…行っておいで」
優しく言うライチ。
「でも…」
「諦めたわけじゃない…ただ、今は彼氏に朱里を譲るだけ」
そう言ってニカッと笑うライチ。
「バカ」
ライチがかっこよく見えちゃったじゃん。
目には溢れんばかりの涙。
オレンジ色の光に照らされたライチの顔が上手く見えない。
「帰ってくるなよ」
どんな表情でそう言ったのだろうか。
どんな思いでそう言ったのだろうか。
…ライチがあまりにも大きすぎて、あたしには何も見えなかった。