キミが好き
でも、このままじゃあいけないことも分かっているからあたしは“ここ”にいるんだ。
「はい」
前より少しばかり低くなった声が返事をした。
ガチャン…!
楽屋の扉が開くと、コンサート前なのかきらびやかな衣装に身を包んだ山田がそこに立っていた。
「ひ、久しぶり…」
久しぶりすぎて、どぎまぎしてしまう。
山田はそんなあたしの腕を引いて、無言で楽屋に招き入れる。
バタン…
閉まった扉を見たまま、じっとしている山田。
あたしはそっと口を開いた。
「来ちゃいけないって言われてたけどさ…つい会いたくて」
あはは、とあたしの掠れた笑いだけが部屋に響く。
この沈黙がやけに心地悪くて、気持ち悪くてあたしはなおも喋り続ける。