キミが好き





         朱里へ


いきなり、自分から別れを告げておいてこんな手紙を書いてごめん。


朱里は怒るかもな。


でも俺さ、手紙とかももちろん初めてだし、こんなにも女を思って悩んで色々考えたのも朱里が初めてだから、上手くいかなくて…


朱里が何を望んでいるのかも解らずに、間違った答えを出してしまったのかもしれないな。


優から言われたんだ。


朱里が望んでいるのは、別れなんじゃなくて、好きという言葉と愛情表現なんじゃないかって。


朱里はそんなこと言わなくてもわかってくれていると、愛情表現なんかなくても好きでいてくれると思ってたかをくくってたんだ。

でも、そんなわけないよな。


朱里が事務所に来た日さ、男と抱き合っている朱里をみてヤキモチ妬いた。


別れるなら、あんな嘘いらねぇのに、ヤキモチの勢いでつい好きな人がいると嘘までついて朱里のこと傷つけた。


それ話したらさ、優に怒られて可奈に蹴られて奈都からは平手打ち。


あの三人変わってないな。

相変わらずで、学生のころ思い出した。


すげぇ、朱里が泣いていて笑っていて怒っていて、拗ねていて。


思い出全部に朱里がいた。

隣には朱里がいた。


どれだけ、大切な存在か今気づいたんだ。


お前がいなくなるなんて堪えられるはずないのに、バカな俺は取り返しがつかないことした。


お前が出ていく日。


きっと、俺は仕事どころじゃねぇんだろうな。


だからさ、行かないでくれないか?


勝手なお願いかもしれない。


でも、行かないでくれ。

俺は朱里が好きです。


仕事を辞める覚悟も出来てる。


俺は朱里がいれば、充分だから。


引っ越しの日、朝から朱里が来るまでずっと近くの公園で待ってるから。


ずっと待ってるから。


来てください。



            山田 悠


< 214 / 220 >

この作品をシェア

pagetop