キミが好き



「ありがとな、優」



「いや…─で?名前は?」



そう言った、優君にあたしは耳を思わず塞ぎ、布団を被る。



聞きたくない、聞きたくないよ。



でも、聞こえてしまったその名前。



「相良 由梨(さがらゆり)つーの」



そう言った山田の声があまりにも優しすぎた。



柔らかくて、落ち着いた山田の声。



胸はキリキリ痛んで、目にはうっすらと涙が浮かぶ。


「…っ…」






…────ねぇ
どうして、人は人を想うの?





どうして、あたしは
山田 悠を好きになったの?





そんなこと、自分が一番わかっているのにあたしは、問わずにはいられなかったんだ。




< 38 / 220 >

この作品をシェア

pagetop