キミが好き
「よいしょ」
と、自転車を漕ぎ出した山田。
その瞬間、風に乗って山田の香りがした。
ヤバい、なんか緊張してきたよ。
腰に回した手は尋常じゃないくらい汗かいていて、顔は真っ赤だし、心臓はうるさいくらい鳴るんだ。
でも、そんなあたしに飛んできた言葉は
「浜野重いっ」
って、レディになんてこと言うのよ、バカ山田ー。
「う〜る〜さ〜い〜!」
わーわー、言って暴れるあたしに山田は笑ながらヨレヨレと自転車を漕ぐ。
そして、言ったんだ。
「ははっ…浜野、やっと元気なった」
って。
ドキン。
「最近、元気なかったからな。つまんねーよ、お前が静かだと」
「な、なによ、うるさくて悪かったわねー」
なんて言って、誤魔化したけど。
あたし、今すっごい心臓うるさくて。
叶わない恋だとわかっているのに、つい願ってしまうよ。
…─山田があたしを見てくれますようにって。