傷だらけの僕等
「ああ。
だから美智に『なぜ帰らないのか』聞かなかった。
とにかくそばに置いておきたかったんだな。
本当に…呆れるくらい幼稚な独占欲…。
別に美智が人生で最初の彼女ってわけじゃないのに。
美智に関しては自分の今までの恋愛経験なんて何の役にも立たなかった。

美智はとても自由な人間で、彼女の自由に生きる姿も俺は好きだった。
だけど、美智の中にどこか掴めないような部分があることも知っていた。
だから余計、そばに置いておくことでつなぎ止めたかったのかもな。」


自分に呆れたようにそう言った。

そんな先生がどうしようもないくらいあたしには切なかった。


「自分の中に、美智には話せない感情も湧き上がってはきていたけど、一緒にいることはやっぱり幸せだった。

美智もよく笑ってたし、二人で他愛もない話をいつまでもした。

だから余計気付かなかった。

忘れてたよ。

『幸せは長く続かない』んだってこと。」

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