傷だらけの僕等

だから今は

【Satoshi side】


『先生は…そのとき…ちゃんと泣けたの?』

彼女の声が頭の中で反響する。


彼女の問いに、俺は答える。

「涙は不思議と出てこなかった。」


それは事実だった。

自分でも不思議なくらい、涙は出てこなかった。

本当に1滴も。

心が崩壊してしまっていたのかもしれないと、ふと思った。

あの時の俺はきっと、人間じゃなくなってた。

だから、涙が出なかった。


「お前が泣くなよ…」

彼女の涙は止まらなかった。


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