傷だらけの僕等
『あたし、体しか持ってないし。』

彼女のメモにはそう続いていた。

普通の男なら、こんな美人な女性にこう言われたら理性を失って襲っているところだろう。
だが俺はむしろ、そんなことしか言えない彼女に呆れてしまった。
なぜ、そんなに自分を大切に出来ない?
昨日出会った男なんかにどうして体を売れる?


「そういうことは好きなやつとしろよ。
自分を簡単に売るな。」

『やっぱり教師なんだね。』

「教師として言ってるんじゃない。
一人の人間として言ってるんだ。」


冷たい沈黙が続く。


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