傷だらけの僕等
『言ってなかったっけ?』

彼女は口パクでそう言う。
読唇術を身につけ始めた気がする。
彼女の唇の動きがだんだん飲みこめてくる。


「聞いてないから聞いたんだよ。」

そう言うと、彼女はまたペンを走らせる。
メモには

『理沙子』

綺麗な字でそう書かれていた。


「りさこ…で合ってるよな?」

彼女は頷く。

「俺は名乗ったよな?」

彼女はまた頷く。

『宮園聡』


口パクでそう言った。
彼女は意識が朦朧とする中で聞いたことも覚えているらしい。

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