傷だらけの僕等
「ってごめん。
今の忘れて。」

前に見た…
そう。
あの頃のように切なげな表情。
ぎゅっと胸が苦しくなる。
俺の手が、自然と彼女に伸びる。
彼女が俺の腕の中に収まる。

「忘れる。
だから…
そういう顔するな。」

「え?」

「そういう顔するなって言ってんの。
分かった?」

「え…それってどういう…」



俺は彼女の唇をふさいだ。

優しくするつもりだったけど、そんなに優しくもできなかった。

「ちょ…っと…な…。」

「そういう顔したらキスするからな。」

「え!?」

「そろそろ上がろう。」


俺は彼女の手を引いた。

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