傷だらけの僕等
「あ…りがとう。」

そう言いながら、またも彼女の瞳には涙が溢れる。

「泣くなって。」

俺は彼女の涙を拭った。


「理沙子もはめてくんね?」

俺はもう一つの指輪を差し出した。

ゆっくりとそれに手を伸ばす理沙子。

そして少し恥ずかしそうに俺の左手の薬指にはめた。


「結婚指輪は二人で選ぼうな。
この指輪は完全に俺の趣味だし。」

「でもこの指輪、シンプルであたし好きだよ。」

「それは良かった。」


指輪をまじまじと見て嬉しそうに微笑む理沙子。
そんな表情に自然と俺の顔も緩んだ。

そしてパチっと目が合う。


「ありがとう…
あたし…今が一番幸せだよ。
あたし…生きてて良かった。
聡を愛せて…本当に良かった。」

俺の目を見つめながら真っすぐにそう言った。

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