傷だらけの僕等
「つーか…なんで俺がこんなこと考えてんだよ…
それこそわけわかんね。」


女のことで頭の中をかき乱されるのはもう懲りたはずだろ?
あの時に…

嫌な思い出が蘇り、俺が少し渋い顔をしたときだった。

髪を濡らしながら彼女がリビングに入ってきた。


「なんで少し髪拭いてから出てこないんだよ?
床濡れんだろ?」

『ごめん』

もう彼女のメモなんか無くても唇の動きだけで分かる。
それを彼女も分かってか、メモを使わない。


「ほら、タオル貸せ。拭いてやるよ。」

何気ない気持ちでそう言い、バスタオルを掴もうとしたその瞬間…
彼女はまたびくっと体を強張らせた。

ああ…そうだった。
忘れてたよ。
俺は彼女に触れることができないんだった。

< 49 / 317 >

この作品をシェア

pagetop